「幸四郎さん、決断してください」
レース4日目の第1チェックポイントで、
TEAM A☆H☆Oのリーダー・こうちゃんこと川島孝一にそう言われた僕は、リタイアを決めたーーー
生まれつきの目の難病で、視野が95%以上欠けている僕は、
大人になるにつれ見えないことを理由に、いろいろなことを諦めてきた。
当然、過酷な砂漠を250km走破するマラソンなんて、自分には無理だと思っていたし、
挑戦するなんて1ミリも想像していなかった。
しかし、こうちゃんにしつこく誘われた時、初めて自分の気持ちに気づいてしまった。
本当は、もっと挑戦したい。
やりたいと思ったことはやりたい。
諦めたくない。
そんな心の奥底に閉じ込めていた本当の声に気づいてしまったのだ。
そして2015年、南米チリで開催されるアタカマ砂漠マラソンへの挑戦を決めた。
しかしーーー
リタイアを決断することになった。
受け入れがたい結果。
でもこの失敗を受け入れるしかない。
「やっぱり自分には無理だったのかもしれない。だけど・・・」
こんなに悔しい気持ちが湧いてきたのは、人生で初めてかもしれないと思った。
そして
「もし幸四郎さんが再挑戦したい気持ちがあるなら、僕はもう一度チームを作って、幸四郎さんの再挑戦を応援しますよ!」
とこうちゃんが言ってくれた。
その言葉がありがたくて、思わず涙がこぼれる。
僕は迷わず再挑戦を決めた。
舞台は前年と同じくアタカマ砂漠での250kmマラソン。
チーム10人での挑戦。
なんと妻のあっこも一緒に挑戦することになった。
結果は10人全員で完走。
僕は両足裏の皮が半分めくれながらも、仲間に支えられ完走することができた。
完走率が70%と言われる過酷なマラソンを、
10人全員で完走できたことはまさに奇跡だと称された。
そしてその挑戦をチームメイトのまさおくんが、
ドキュメンタリー映画「LIFE TREASURE」として完成させた。
映画は全国で自主上映会が開かれ、
多くの人の勇気や感動、そして一歩を踏み出すきっかけになった。
過酷なマラソンに挑戦する仲間も増え、
それぞれの新しい人生ドラマへとつながっていった。
ふと、もしあの時僕がリタイアしていなかったら、
映画は作られることもなく、多くの人の勇気やきっかけも生まれなかったのでは?と思った。
そういえばてんつくマンが作ったドキュメンタリー映画「天国はつくるもの」をみた時、
いつかこんな映画に出れるような人になりたいって思ってたっけ。
そう思うとひょっとすると、時間は過去から今、今から未来に続いているように感じるけれど、
本当は未来から今に流れてきているのかもしれないな、と思った。
「こうなったらいいな」と思った瞬間、未来にそれが存在して、
そこに向かっていくストーリーが今に伸びてくる。
それは時に「失敗」という形として。
「失敗は成功のもと」という言葉があるけれど、「失敗は成功への道」なんだと思う。
失敗するたび、「こうなったらいいな」という未来に一歩近づく。
こうちゃんは誰かが失敗した時、とっさに
「おめでとう!」
と言う。
まさに失敗は「おめでとう」なのかもしれない。
失敗を喜ぼう。
失敗を受け入れて喜べたなら、望む未来にグッと近づけるから。
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このエピソードは映画になってます!
よかったら見てね!
↓↓↓
https://www.tanewomakuhito1.com/life-treasuresp
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